イタリアのリチャード・マイヤー
リチャード・マイヤーは、ル・コルビュジェを根源とした正統派モダン建築の継承者であり、長年にわたる一貫したスタイルと芸術性、初期の住宅設計で培った設計の緻密さは、規模に関わらず保たれ、多くの作品は国際的に高く評価されています。私の好きな建築家の一人でもあります。イタリアでもいくつかのプロジェクトを実現させていますが、写真は最近の集合住宅作品ヴェネツィアのリド・ディ・イェゾロのプロジェクト、彼の白いモダン建築と一般住宅とのコントラストは強烈です。イタリアは一般的に斬新なものの発信地と行った印象がありますが、内情は非常に保守的な人たちの集団です。
前回、古新共存はイタリアのテーマと書きましたが、実現はそう簡単ではありません。この白いモダン建築は地元ではどのように評価されているのでしょうか。一方、ローマではリチャード・マイヤーの建築作品が存続か否かを巡る論争が起きています。彼が設計したローマの新名所アラ・パチス美術館はその名の通り、紀元前9世紀のアウグストの祭壇、アラ・パチスの展示を中心とした複合施設。2006年の完成当時から、一部の著名な美術評論家などからの批判され、このモダン建築はローマの歴史的中心区には不釣り合いとの声が上がりました。マスコミがそれを取り上げると、市民の関心も高まります。さらに政治的な背景もあり話は複雑に。
アラ・パチス美術館の計画は中道左派の元ローマ市長ルテッリ氏により始められ、同派のベルトローニ氏に引き継がれ2006年に竣工する訳ですが、現在のアラ・パチスの展示場所、ピアッツァ・アウグスト・インペラトーレはファシズム時代ムッソリーニによって創られた重要な展示施設があった場所でもあります。
今回、ローマ市長選で久々の当選を果たした中道右派のアレマンノ氏は元右派政党出身、アラ・パチス美術館計画当時から批判していた彼にとって市長になった今、ピアッツァ・アウグスト・インペラトーレは思想的にも重要な場所であります。しかし今は中道左派の連中の手柄として、そしてローマの新しい顔となっているのですから、アレマンノ氏にとっては面白くありません。
アラ・パチス美術館解体またはローマ郊外に移設かはアレマンノ新市長の采配によるところが大きくなりました。2008年4月30日、アレマンノ、ローマ市長就任初日の発言では、 “モダン建築” イエスかノーは市民投票によるとのことですが、さてどうなる事でしょう。
